
1月12日、日曜日、13時から17時まで、まちづくり活動プラザにおいて、中野吉之伴さん指導者セミナーを開催しました。
中野さんの帰国スケジュールの合間を縫っての緊急開催となりましたが、12名の方に参加申し込みいただき、8名が参加されました。
中野さんからのドイツでの取り組み事例の紹介に加えて、参加者からの質疑応答のかたちで、活発に意見交換しました。

中野さんの問題提起。世界の国々で、育成年代(5歳~17歳)において、国内ナンバー1を決める大会を行っているのは2か国しかないそうです。
その2か国とは、日本と朝鮮民主主義人民共和国。
かつてはヨーロッパでも南米でもそのような大会を行っていましたが、今は行っていません。なぜでしょうか。
そのような大会を行って得られるものより、失うものの方が多い。勝利を追求し達成するのは非常に強い刺激になるが、そういう刺激を常に与えられていると、子どもたちは馴化してしまい、常にもっと強い刺激がないと動機づけが起こらないという副作用がある、と話されました。


ドイツは2000年から、育成年代の改革に着手しています。
FIFAランキングでは上位10位にはいるかどうかという状況ではありますが、ワールドカップで4回優勝している国が、どうしてそういう危機感をもっているのでしょうか。
ドイツの学校教育は、午前中で授業は終わり、塾はなし、学校内には体育施設はありません。
学校でも家庭でもない、ストレスを開放する場としてのスポーツクラブの役割をとても大事にしているそうです。
かつでは子どもたちはどこでも自由にボールを蹴っていました。ストリートサッカーです。しかし現在ではどこでも自由にボールをけることは難しくなっています。ストリートサッカーをクラブのサッカーに落とし込むというのが、ドイツのスポーツクラブだそうです。
そのひとつがフニーニョです。5歳の子どもがいきなり11人の大人のサッカーができるわけはありません。子どもの成長、発育発達に合わせて、子どもが自分たちのプレーができる環境を創りました。
フニーニョとは3対3、4ゴールで行うミニゲームで、審判はいません、オフサイドもスローインもありません。
ドイツの街クラブ(25,000クラブあるそうです)が果たす役割と運営の仕組み、行政や地域との関係についても、さまざまなお話をいただきました。
もちろんすべてドイツのやり方が良いわけではなく、日本ではドイツの街クラブの役割を学校が引き受けているのですが、これも制度疲労がめだってきています。
一番の問題は、子どものときにサッカーを楽しくて始めた子どもが、成長にしたがってサッカーを楽しめなくなり、ある時点でサッカーをやめてしまうということです。
これはドイツでも大きな問題になっており、だから育成の改革についてはこれで終わりということはない、いつまでも、継続的に、時代の変化についていかなければならないと、中野さんは話します。



ドイツでは育成年代のサッカーとして、5対5や7対7のサッカーを行っていましたが、9歳以下の子どもにとっては、それもプレーの選択肢が多すぎて、十分にボールに触ることができない、意図のないプレーをしてしまうということを、統計を取って検証したそうです。
サッカーを始めた子どもたちが、自分がやりたいプレーができ、全員が常にボール・プレーに関わるのがフニーニョで、ドイツでは9歳以下の大会については、ずべてフニーニョを導入すると決めました。


日本では全国のナンバー1を決める大会が、小学生、中学生、高校生年代でそれぞれあります。
浦安の子どもたちも、そういう大会に参加しています。
それは間違いなのでしょうか。
世界の流れをみたら合っているとは言えませんが、一方で日本人の気持ちの中に、そういう大会を望んでいる、そういう大会が好きだという現実もあります。


まとめ的な意味で最後に紹介いただいたスライドです。
ドイツでも導入期から7対7、11人制へと昇っていく階段が急すぎて、途中でやれなくなる子どもたちがいました。これからは、成長、発育発達に合わせて、子どたちがひとつづつステップを上がっていけるようにしていきます。
これでセミナーはお仕舞いです。では明日から、私たちはなにをすればよいのか。
このイラストと同じで、我々もひとつづつステップを上がっていく、できることから、みんなで一緒に取り組んでいくことが大事なのではないかと感じました。
浦安市サッカー協会では、2025年度の事業として、このようなセミナーや指導実践の場を増やしていきます。それに合わせて、現在行っている活動を順次見直して、これまでやってきたからこれからもそのままではなく、得ているものより失っているものが多くなっていないか、副作用はないか、より良いやり方はないか、検証しながら進んでいきます。
浦安でサッカーを始めた子どもたちが、生涯にわたってサッカーを続けることができように、そしてプレーするだけでなく、様々なかかわりができるように、さらにサッカーだけでなくスポーツを愛し、みんなで一緒に何かに取り組む喜びを感じることができるよう、私たちができることをやっていきます。
ドイツから来浦いただいた中野吉之伴さん、お忙しい中参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。